プレイレポート

「TRAINS」をプレイしていただきました

頒布版の印刷期間中に、作者を交えずに初見のプレイヤーだけで「ルールが理解しやすいか」「プレイ中に出る疑問点はどこか」などを知るために試遊会をおこないました。そこにご参加いただいためるりさんにプレイ後のレポートを書いていただきました。ありがとうございます!


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『TRAINS』を遊んでまず思ったのは、大きな評判を呼んだ『ドミニオン』の魅力的な発展系ではないか、ということです。実際、このゲームの内容は、『ドミニオン』の基本を踏襲したものとなっています。サプライを用意する、手札は5枚、カードによって購入とアクションができる、使ったカードを購入したカードは捨て札に行く……などなどです。

 では大きな違いは何かといえば、フィールドマップの存在でしょう。そこにコマを置いて線路を伸ばし、駅同士をつないでいく……というのが、このゲームの目的の一つとなっています。この点は、有名どころでいえば『カタン』や『カルカソンヌ』の要素を感じますし、それこそOKAZU Brandの前作である『ひも電』を引き継いだものといえるかもしれません。そういうわけで、『ドミニオン』では重要であった勝利点カードの点数、つまりゲームに占める重要度が、『TRAINS』では全般的に低くなっています。その分、「線路コマ」と「駅コマ」によって得点が入るため、このコマの設置が重要な意味を持ってくるわけです。

 基本的なゲームの流れは、「資産カード」(『普通列車』『急行列車』などがあります)で場のサプライにあるカードを購入したり、「アクションカード」でゲームを有利に進めるアクションを行って、自分のデッキを強化していきます。そして、『線路敷設』カードや『駅拡張』カードなどを用いて、「線路コマ」を置いて路線を伸ばし、「駅コマ」を置いた「都市マス」まで繋げていくのです。ゲーム終了時に、「駅コマ」の置いてある「都市マス」に「線路コマ」が設置してあれば、その分の得点が入ります。また、『ドミニオン』と同じように「勝利点カード」もあるので、ゲームを決めにいくタイミングを見計らうのが肝心といえるでしょう。

 さて、「線路コマ」は自分のコマに繋げるように設置しないといけませんが(線路ですから当然ですね)、駅コマは好きな「都市マス」に置けるのがポイントです。つまり、自分の「線路コマ」から離れている「都市マス」に「駅コマ」を置いてもよいのです。「駅コマ」を置かないことには「都市マス」に線路を引いても意味がありませんが(その場合、ゲーム終了時に勝利点は獲得できないのです)、その「都市マス」に誰が線路コマを置いても得点になるわけですから、そこに一つの駆け引きが生まれます。また、フィールドには「線路コマ」を置くのにコストがかかる場所もあるので、資金はカードを購入する以外の場面でも使用することになります。そのやり繰りがゲームに多面線を生んでいるように感じました。

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 ゲームをプレイすればすぐわかりますが、フィールドにコマを置くという要素により、現在の状況や、各プレイヤーの戦力などが“可視化”されている……という印象を受けました。誰が有利で誰か不利か、というのが分かりやすいというのはもちろん、参加者のプレイが状況に変化をもたらすことが、目に見えてわかりやすいのです。自分の路線を育てるだけではなく、相手が駅を建てた「都市マス」に“乗合”することで、戦況を変えることもできる。フィールドの存在と、カードのサプライの存在という、言うなれば2つの場を見てプレイすることにより、ゲームが一本調子になることがありません。

 また、購入を行う「資金カード」と、種々のアクションを行う「アクションカード」の他に、「線路敷設」と「駅拡張」を行うカードがサプライに常備されているのも面白いところ。それだけ、このゲームではフィールドにコマを置くことが勝負の鍵を握るということです。もちろん、コマを置きたいからといってこれらのカードを買い過ぎると、山札でそれらがダブついてしまい、デッキの回りが鈍くなってしまいます。また、「線路コマ」の設置にはコストがかかる場合がありますし、「駅コマ」が設置された「都市マス」や、「路線コマ」を置くだけで勝利点が獲得できる「遠隔地マス」に設置しないことには得点源になりません。つまり、ただいたずらに伸ばしていけばいいというものではないのです。

 もう一つこのゲームで大きいのは、『廃棄物』カードの存在です。「駅コマ」や「線路コマ」を設置することで自分のものとなるこのカードですが、まったく役に立たないお邪魔な存在。例えば『ドミニオン』の「勝利点カード」もプレイそのものに対しては邪魔なものでしたが、これはゲームの終わりに得点となるので、取らないことにはゲームに勝つことができません。しかし、『廃棄物』カードはプレイはおろか、得点にもならず、何の役にも立たないのです。それなのに、ゲームの勝利には必要不可欠なコマの設置により、必然的に自分の手に回ってきてしまう。つまり、いかに『廃棄物』カードを処理するかということが重要になってくるわけです。その点で地味ながら面白いのは、自分のターンに購入もアクションもしないことで、手札の『廃棄物』カードを全てサプライに戻せるという特別アクションが選べることでしょう。これによって、手札がイマイチな時にどうしても取らざるをえない「何もできないから、何もしない」という消極的なプレイに、積極的な意味を持たせることができます。

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 「アクションカード」や「資金カード」は『TRAINS』の名に違わず、すべて鉄道関連のものとなってるのも楽しいところです。鉄道ファンなら、実際の路線にそって線路を伸ばしていく、あるいは実際には不可能そうな路線を作ってしまう……といった楽しみもありそうです。例えばテストプレイ中に、川越〜吉祥寺〜横浜と路線が繋がった時には、参加者の間で「便利な路線だな」と笑いが生まれたほど。鉄道に詳しくなくとも、通勤に電車を利用する人なら思わず「ニヤリ」とする展開が訪れることも多々あるでしょう。また、フィールドマップをプレイヤーが自作しても面白いかもしれません。デフォルトでは関東と関西の2面がありましたが、他の地方や、より狭い圏内をマップにしても面白そうです。それこそ、小説やゲームに登場する架空世界のマップを作ってもいいかもしれません。

 プレイする前は「『ドミニオン』と同じようなゲームかな?」と思いましたが、フィールドがあるという意味においても、様々な追加要素が楽しめそうという意味でも、『ドミニオン』にあったゲーム性をより「広げる」ゲームなのではないか、というのが率直な感想でした。これからまた細かい修正や新しい要素の投入があるのかもしれませんが、現段階でも、初心者から上級者まで訴えかける内容があったように思います。
 もちろん『ドミニオン』を知らない人でも楽しめる内容ですよ!

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